仄かに月明かりの差し込む薄暗い部屋の中で、銀次はまどろむ。
愛しい人をその腕の中に抱いて…
幸せそうに眠る横顔をじっと見つめて微笑んだ。
「…蛮…ちゃん…」
起こさないようにそっと、その頬に唇を落とす。
腕の中の愛しい人がわずかにみじろぐ。
愛しい…愛しい…。
蛮をみつめる銀次の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「あれっ…なんで泣いてるんだろう!?」
……………
不安が隠しきれない。
だって…
…………
オレは怖いんだ。
この幸せな時間が、いつか終わりを告げるのか。
いつの日か幸せの絶頂な時に、蛮ちゃんが「いい悪夢見れたかよ」って言うかもしれないのが…
こうして、蛮ちゃんが寝ている時に見ている事しか出来ないんだよ…
ねぇ、このままずっと二人で寝ていたいよ…
…ね!?蛮ちゃん…
「銀次、重い」
いつのまにか蛮は目が覚めていたようだ。
あわてて蛮から体を離して目をこする。
…………
「なぁ、銀次。おまえ、時々夜中泣いてるよな!?なんでだ!?」
気づいて…たんだ!?蛮ちゃん…
銀次が目を丸くしていると、蛮が後ろからそっと抱きしめた。
「こうして抱きしめてる腕は本物の俺だぞ…!?」
「蛮ちゃん…!?」
「なんでわかっちゃったの!?」
銀次は目を丸くして聞いた。
蛮は少し照れ笑いをしながら答える。
「バ〜カ、おまえの考えてる事なんてお見通しだ」
「蛮ちゃん…!!!大好き!!!」
銀次は蛮に抱きついた。
「ばっバカ、離せ!!!このバカ力!!!」
必死に蛮は逃れようとするがなかなか離れない。
「蛮ちゃん!!!」
かりっと蛮の首筋を齧る。
今日の夜もまともに眠れそうにない二人であった。
END
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